Amy Klobuchar著「The Joy of Politics: Surviving Cancer, a Campaign, a Pandemic, an Insurrection, and Life’s Other Unexpected Curveballs」

The Joy of Politics

Amy Klobuchar著「The Joy of Politics: Surviving Cancer, a Campaign, a Pandemic, an Insurrection, and Life’s Other Unexpected Curveballs

2020年大統領選挙の民主党予備選にも立候補したミネソタ州選出の連邦上院議員エイミー・クロブシャーの本。大統領選挙への立候補表明から撤退、バイデン元副大統領の応援、コロナウイルス・パンデミック、反人種差別運動の高まり、選挙結果と議会襲撃事件、ウクライナ、バイデン政権のさまざまな政策と議会共和党による妨害などのトピックをカバーしている。

ブラック・ライヴズ・マター運動の爆発的な盛り上がりのきっかけとなったジョージ・フロイド氏の殺害は著者が代表するミネソタ州最大の都市ミネアポリスで起きた。地元の政治家として何と言うのか興味があったけれど、著者は元検察官であり、党内では中道派・穏健派に位置づけられる立場なだけあって、人種差別反対を訴え直接フロイド氏の殺害に関わった警察官を批判しながら、警察組織を擁護しより予算を与えるべきだと主張している。いや知ってたけど。いっぽう同じミネソタ州選出のティナ・スミス上院議員ら民主党の同僚だけでなくジョン・マケインやロイ・ブラントら共和党の上院議員との友情や協力の話はおもしろく、2009年にオバマ大統領が就任して以降の共和党の強硬化のなか彼女は中道派としてなんとか橋渡しをしようと精一杯やっているのも分かる。

また、ミネソタ州はスカンジナビア出身の移民の子孫が多く、ロシアによる周辺国への侵略や干渉に関心が高いこともあり、著者はゼレンスキーがウクライナの大統領になる以前からマケイン議員やリンジー・グラム議員らとともに同国を訪問するなどの活動をしていた。ほかにも、2022年の後半にはそれまでバイデンのさまざまな法案の成立を阻んでいたジョー・マンチン上院議員とチャック・シューマー上院院内総務とのあいだで妥協が実現し多数の法案が成立したことや最高裁による妊娠中絶をめぐる判決への反発などの結果同年の選挙で大敗が予想されていた民主党が踏みとどまったことなどが書いてある一方、たとえばアフガニスタンからの米軍撤退の際の失敗などバイデン政権の失点となる話題はほとんど触れられていない。

ミネソタ州の政治家といえば民主党リベラル派の一時代を築いたポール・ウェルストーン議員、元副大統領のウォルター・モンデールとヒューバート・ハンフリーなど、20世紀の民主党の主流で力を持った政治家が何人もいて、著者もかれらからインスピレーションを受けてかれらの後に続こうとしている。政策的にわたしとはかなり立場が違うけれども、彼女の言うとおり、2020年の大統領選挙であれだけ多数の、そしてさまざまな立場を代表する女性候補が出てきたことはすごく勇気づけられる。