Yasmine El Rashidi著「Laughter in the Dark: Egypt to the Tune of Change」

Laughter in the Dark

Yasmine El Rashidi著「Laughter in the Dark: Egypt to the Tune of Change

「アラブの春」のなか独裁者ムバラク大統領が打倒されたエジプト革命から12年、その後の選挙で選ばれたムルシー大統領が軍によるクーデターにより失脚してから10年経った現在、近年でもっとも厳しいとされる政府の検閲や言論弾圧のなか、若者たちがどのようにして社会に対する不満を表現しているか追ったドキュメント。

エジプトは人口の六割を25歳以下が占める若い国で、12年前の革命では若者たちがツイッターを使って司令部を作らないまま連携して独裁政権を打倒したことが話題となった。当時より厳しい規制により公に音楽活動をするにも政府の許可がいるいま、かれらはTikTokで日常の不満を訴えたり、YouTubeでマーラガーナと呼ばれるヒップホップとエジプト伝統音楽を融合させたストリートミュージックのジャンルの音源を発表するなどしている。

本書はマーラガーナのシーンについて詳しく書かれていて、どれだけ自分が稼いで贅沢な暮らしをしているか見せびらかすだけの軽薄な奴がいたり、音源を通したディスバトルが起きたりしていて、そういうのって世界共通なんだなあとおもしろいのだけれど、女性アーティストの存在にまったく触れられていないのが気になった(TikTokにアップロードした動画が理由で収監された6人の女性については一瞬だけ触れられている)。「Arabs Got Talent」に出てパフォーマンスしたあとフェミニスト活動家としても知られるようになったMayam Mahmoudさんはじめエジプトにも女性ラッパーはいるんだから、彼女たちについても取り上げて欲しかった。