Madhumita Murgia著「Code Dependent: Living in the Shadow of AI」
フィナンシャル・タイムズの編集者が人工知能(AI)がわたしたちの生活にどういう影響を及ぼしているか論じる本。
AIを補完し同時にAIが使う学習データを生産する途上国の労働の現場、ディープフェイクによって生成された性的な画像や動画の氾濫が女の子たちに与えている影響、AIを使って一気に進展した監視社会化、福祉政策のなかで採用された結果誰も知らないうちに不公平が強化されてしまう仕組み、その他さまざまな問題の発生と、それに追いついていない規制や人権保護の仕組みが次々と論じられる。
個々の話題はこれまでにもたくさんの本で書かれてきたことだけど、一冊にいろいろな話がまとめられているのは価値がある。たとえば医療にAIを使うことでこれまでには難しかった診断を早く下すことができたり、その人にあった治療法をみつけることが簡単になるなどAIの利点はたくさんあるけれど、それを利益目当ての企業が行いそのプロセスが秘匿化されることは、データ収集・解析・利用それぞれの場面で起きるプライバシーや人権の侵害や不平等な扱いに対するチェックが行われないおそれがある。というか本書にいくつか紹介されているよいうに既にそうなっている。AIの社会的影響についてとりあえず一冊読むには適していると思う。