Jean Guerrero著「Hatemonger: Stephen Miller, Donald Trump, and the White Nationalist Agenda」

Hatemonger

Jean Guerrero著「Hatemonger: Stephen Miller, Donald Trump, and the White Nationalist Agenda

34歳にしてトランプ大統領の上級政策顧問・スピーチライターになった反移民活動家スティーヴン・ミラーの伝記。幼少期から学生時代、右派メディアで働いた時代を経てトランプの選挙陣営に入り込み、トランプの移民排斥政策を過激な方向にプッシュし続けたミラーのどうしようもない半生が描かれる。

いやもう、思った以上にどうしようもないというか、学生時代にキャンパス内の右派コラムニスト・活動家として白人至上主義や性差別・性的指向差別的なことを発言しまくったのは今に繋がるからわかるんだけど、「給料を払って清掃員を雇っているんだから生徒はゴミを散らかしてもいい、片付ける必要なんてない」とわざわざゴミを床に捨ててた、というエピソードが複数回出てくるあたりは、まじどうしようもないクズだと思った。難民申請をしている親子を引き離し親子関係の記録も残さない政策により親子が再会できなくなってしまった事件によってトランプ政権は批判を浴びたけど、これはあまりに評判が悪いからなんとかしなければ、と焦る他の政策関係者を邪魔するなど、上級政策顧問のミラーは本来の命令系統を無視してさまざまな部署に口を出し、またトランプはじめ政権トップに右派メディアの差別的なデマや陰謀論を吹き込んでいたが、それがトランプに黙認されているものだから誰にも止められなくなったあたり、トランプ政権の無茶苦茶さがよく分かる。

ミラーのような筋金入りの白人至上主義者・人種差別主義者が政権中枢でこれだけの影響力を持ったことはおそろしいけど、実際のところかれの主張は極端すぎて結局かれが望んだ政策のほとんどは多くの悲劇を巻き起こした挙げ句、成功とは言い難い結果に。たとえば非正規移民のうちでも犯罪を犯した人やアメリカ市民の家族がいない人を優先して取り締まったオバマ政権は実務能力があったせいで大勢の人を国外追放したが、長年平和にアメリカで暮らしていてアメリカ人の家族がいる人も含め全ての非正規移民を片っ端から追放しようとしたトランプ政権はその無能さと節操のなさから国中から抵抗されてオバマ政権ほどの移民を追放できなかった。オバマ政権の有能さも無害ではないということか。予算通過を阻止して連邦政府を閉鎖させてまで目指したメキシコ国境との壁の建設がほとんど進まなかったのもよく知られている通り。前政権で失敗を繰り返し経験を積んだこいつがまた政権に戻らないように願いたい。