Jacob Silverman著「Gilded Rage: Elon Musk and the Radicalization of Silicon Valley」

Gilded Rage

Jacob Silverman著「Gilded Rage: Elon Musk and the Radicalization of Silicon Valley

イーロン・マスクに代表される、シリコンバレーの極右への転向について追った本。著者は、のちに大統領候補として共和党予備選に立候補し、トランプ大統領によってマスクとともに政府効率化省(DOGE)を任されると発表された(が直後にマスクに押し出された)ヴィヴェク・ラマスワミのバイオテック企業で短期間ながら雇われていた経験もあるジャーナリスト。

本書では、2016年の大統領選挙にトランプが立候補して当選、2020年には落選するが2024年に復活し第二次政権で急激な政府の私物化・権威主義化を進めるまでの経緯のなかで、マスクやピーター・ティール、デイヴィッド・サックスらに連なるテック富豪たちがどのような役割を果たし、規制を破壊し富を独占してきたかが綴られる。パランティアに代表される治安維持・軍事へのテクノロジー採用推進やツイッターの買収と政治化、サウジアラビアやその他の非民主的国家との結び付きとその影響、サンフランシスコ市政への攻撃や乗っ取りとテック企業が支配する新たな街の建設を目指す動き、オンラインプラットフォームの独占市場化とメタクソ化、DOGEによる政府機能の破壊、政策的な暗号通貨の推進によるトランプやテック富豪たちへの私的な利益誘導、中国の脅威を口実としたAIやテックの規制阻止とTikTok買収の実現など、さまざまなトピックの繋がりが明かされていく。

まあ、あれですな、行き着くところまで行ったというか。マスクはもう元のようなカリスマには戻れないかもだけどいまだに危険だし、ピーター・ティールとその弟子であるJDヴァンス副大統領らの権力は健在。治安維持や軍事と結びついたテック企業はトランプ政権によるリベラルな都市への侵攻と占拠でも活躍してるし、電力や水資源を政策的に最大限ぶち込んだ暗号通貨やAIがコケたら2008年の金融危機以上の経済的破滅が起きそうな感じ。タミル人のラマスワミ以外は登場人物が全員白人男性で、しかもその中心的な人たちはアパルトヘイト時代の南アフリカに住んでいた、もともと民主主義に価値を認めていない人たちだったりするわけで。あめりかおわた。てゆーかアメリカだけで済めばまだいいんだけど、そうはいかないだろうなあ…