Cass R. Sunstein著「On Liberalism: In Defense of Freedom」

On Liberalism

Cass R. Sunstein著「On Liberalism: In Defense of Freedom

キャス・サンスティーンせんせーの量産型新著その1。リベラリズムが社会的信用を失い右派からも左派からも攻撃されるなか、ミル・ハイエク・ロールズら多様な理論家を引用しながらリベラリズムの伝統の幅広さと奥深さを訴える本。

なんだけど、著者が実感している「左派からの攻撃」って一部の大学キャンパスで学生たちが極右論客の講演に反対した、言論の自由を理解していない、とかその程度の話で、その同じ大学の学生たちがパレスチナ支持を訴えたことで退学させられたりしている現在、左右双方によるリベラリズムへの挑戦を同じように扱うのはどうなの、というのは前著「Campus Free Speech: A Pocket Guide」から続く疑問。

序盤はリベラリズムといってもいろいろな考え方があるとして自らの意見をあまり出さない著者が、終盤になるとニューディール的なリベラリズムへの支持を明らかにしていくあたり、ようやくなんらかの議論が出てきたという気がするのだけれど、過去の著作のリサイクルが過ぎる。とくに「How to Become Famous: Lost Einsteins, Forgotten Superstars, and How the Beatles Came to Be」から何ページにも渡ってまったく同じ話が同じ形でリサイクルされてて、そんなことして内容も物理的にも薄い本を量産しても、と思う。ちなみにほぼ同時に著者はもう1冊本を出しているので懲りずにそっちも近いうちに紹介します。