William R. Harvey著「Historically Black Colleges and Universities’ Guide to Excellence」

Historically Black Colleges and Universities’ Guide to Excellence

William R. Harvey著「Historically Black Colleges and Universities’ Guide to Excellence

歴史的黒人大学」(HBCU)の一つであるハンプトン大学の学長を長年勤めてきた著者が、HBCUが歴史的に果たしてきた役割やその理念とともに、キング牧師やカマラ・ハリス副大統領など多数の著名な卒業生たちがHBCUで学んだ価値観をどのように活かして現実社会で活躍してきたか説明した本。

HBCUはもともと高等教育から排除されていた黒人たちに教育を受ける機会を与えるため設立され、政治家、活動家、文学者、芸術家などさまざまな面で黒人社会の指導的な立場に立つ人たちを育成することを通してアメリカ社会に大きな影響を与えてきた。現代では黒人たちの入学を拒む大学はなくなったけれども、それでも黒人の学生が自分が黒人であることで肩身の狭い思いをしたりマイクロアグレッションなどを通したウェザリングに晒されずに学業やその他の活動に専念できる環境は貴重。とはいえ最近では黒人以外の学生も増えてきており、すでに白人が学生の過半数になったHBCUも全国に三箇所ある。

HBCUが重視する理念は勤勉であったり誠実さであったり古典的な啓蒙思想のそれだし、エリート主義的・シスヘテロ男性中心主義的な側面もあるし、人種隔離撤廃に消極的だったニクソン大統領や白人至上主義団体に肩入れしたトランプ大統領がHBCUを支持したように白人至上主義者によって都合の良い隔離制度として利用されることもあるのだけれど、こうした教育機関が選択肢としていまも存続しているのは大事。