Sasha taqʷšəblu LaPointe著「Red Paint: The Ancestral Autobiography of a Coast Salish Punk」

Red Paint

Sasha taqʷšəblu LaPointe著「Red Paint: The Ancestral Autobiography of a Coast Salish Punk

シアトルのパンクシーンで活躍する先住民系女性アーティスト・詩人が癒やしと家を求めて祖先の足跡をたどる回想録。ワシントン州北部カナダ国境のベリンガムからシアトル、タコマ、そしてオレゴン州アストリア(映画「グーニーズ」の舞台でもある)までまたがる話は、わたし個人にとってよく知る場所やシーンの連続で親しみを感じるけれども、読み始めると思っていたよりヘヴィーな内容。

タコマ近くの貧しいインディアン居住区で定住できる家を持たない家族のもと育った著者は、性虐待を受けたことをきっかけに家出して、シアトルでパンクシーンに出会ってのめり込むも、そこでもまたデートレイプの被害を受けたりして、過呼吸や乖離などPTSDの症状に苦しむ。パンクバンドのメンバーの白人男性と付き合い結婚するも、この男がまたハネムーンのためのお金を勝手に海外ツアーのための資金にしたり、彼女の詩を評価してバンドに誘ったのに結局別の人を入れるなど、彼女をぞんざいに扱う。PTSDの症状がおさまらない彼女に対して、「あなたの家族の女性はみんな病んでいる」と言い放つ夫。

彼女の家族の女性たちは、たしかに病んでいた。彼女のミドルネームtaqʷšəbluの元となった彼女の曾祖母は、白人がもたらした天然痘で全滅した一族の唯一の生き残りで、文化も言語も本来の名前も奪われたうえで、白人男性と結婚して子孫を残した。その子孫たちも長いあいだ伝統文化の継承を白人国家によって法的に禁止され、その後ようやく文化は合法化されたけれども、絶望的な貧困のなか健康を脅かされ、麻薬やアルコールへの依存や暴力にさらされて生きている。しかし白人の夫がそれを指摘し、まるで彼女の家族の女性たち自身に問題があるかのような言い方をするのは間違っている。

その後別れようとするも妊娠していることが発覚し、子どもを生みたい、父親にも子育てに参加してほしい、と思いつつ、夫との関係をどうしようか悩むも、妊娠は流産に終わる。そのことにショックを受け、彼女は曾祖母がかつて住んでいたアストリアの家屋を訪れ(アストリアの歴史博物館には曾祖母についての記録があったが、それは事実と反した内容だった)、またタコマにいる家族や親族のもとで伝統的な儀式を受けることで、ただ生き延びるだけでない「癒やし」を見つけようとする。また彼女はアメリカ政府による先住民の土地の分割・私有化政策によって彼女の祖先が与えられていたワシントン州ベリンガム近郊の土地が彼女のものになっていることを知り、相続するも、その土地になんのつながりも持たない彼女は部族政府にその土地を売り、そのお金で家族のいるタコマに家を買う。さらに彼女の詩の才能を知った女性バンドに誘われて詩人・ヴォーカルとして加入するとともに、私生活でも現在は女性と付き合っていて、プライドパレードにTwo-spiritの一員として参加している。

わたしにとっては、自分が住んでいる地域の先住民である彼女や彼女の家族・親族らの文化や経験に触れるとともに、わたし自身も出入りしているシーンの近くにいる人、しかもサバイバーでアーティストの話なので、共感しながら読んだ。直接の知り合いではないけど、知り合いの知り合いではある。Medusa Stare(メデューサの凝視)といういかにもな名前の彼女のバンドの音楽も、ライオット・ガール直系な感じで好き(トラック4の「Poison Garden 1」は上で紹介した夫に言われた暴言を元にした詩なので是非聴いて)。ライヴ見に行きたい。