Sarah Scoles著「Countdown: The Blinding Future of Nuclear Weapons」
ロシアのウクライナ侵攻などにより冷戦終結以来もっとも核戦争の危険が高まっているとされるなか、アメリカの核施設が集中しているコロラド州に拠点を置く科学ライターが、核防衛の前線で働いている関係者らに取材してアメリカの核兵器事情について書いた本。
本書で書かれているのは核配備をめぐる政治や軍事戦略的な話ではなく、核兵器そのものの老朽化やそれによる抑止効果の不確かさに疑問を抱きつつ、決してそれが使われないことを願いながら、核による反撃能力の確実さが世界戦争の抑止に繋がると信じて働いている人たちの思い。あと、核拡散防止条約の抜け穴を使って冷戦時代に作られた核兵器をアップデートしようとしている米軍や研究機関の活動についても触れられているけど、「最近ではコンピュータ・シミュレーションにもともとはゲームや3D映像のために作られたGPUを転用している」という話がなにかとても重要な感じで出てきて、いまどきそりゃそーだろ!と。