Peniel E. Joseph著「The Third Reconstruction: America’s Struggle for Racial Justice in the Twenty-First Century」

The Third Reconstruction

Peniel E. Joseph著「The Third Reconstruction: America’s Struggle for Racial Justice in the Twenty-First Century

ブラックヒストリーを専門とする歴史学者が、2008年から現在までを南北戦争後の狭義のリコンストラクション期および1950~1960年代の公民権運動の時代に次ぐ「第三のリコンストラクション」と位置づけ、マルチレイシャルな民主主義を指向するリコンストラクションの動きとそれに反対する白人至上主義的なリデンプションの動きのせめぎ合いとしてアメリカの歴史を語り直す本。

これまでにもいくつもの本(たとえばこれ)の紹介を通して説明しているとおり、リコンストラクションとは奴隷制から解放された黒人たちが教育を受けたり政治に参加する権利を保証するために南北戦争後に実施された一連の政策とその時代。一部の黒人たちは白人たちと並んで事業を起こしたり選挙で当選して指導的な地位に付くことができたけれども、多くの南部の白人たちは知性と倫理に欠けた黒人たちによる不正や腐敗と戦うためという口実で暴動やテロを起こし、暴力的に対抗した。奴隷解放を進めた共和党内急進派の勢力が弱まるとアメリカ連邦政府はリコンストラクションを放棄し、リデンプションと呼ばれる白人至上主義復古の動きが広まる。かれらは黒人だけをターゲットとした法律によりかれらを犯罪者として逮捕したうえで労役受刑者としてプランテーションに貸し出すという形で奴隷制を実質的に復活させたり、黒人が投票できないように選挙制度を改悪するなどした。

教育における人種隔離を違憲とした1954年のBrown v. Board of Education判決をきっかけに広がりキング牧師やマルコムXといったカリスマ的な指導者を得た公民権運動を「第二のリコンストラクション」と表現するのは著者独自のものではない。1964年の公民権法や1965年の投票権法など画期的な法律により第一のリコンストラクション以来はじめて人種平等と黒人参政権が保証されることになったが、Stephen Steinberg著「Counterrevolution: The Crusade to Roll Back the Gains of the Civil Rights Movement」にも書かれているような白人至上主義的な反発も巻き起こした。この「第二のリデンプション」は、人種平等の建て前は残したまま「すべての人が努力すればアメリカンドリームを達成できる」と宣伝しつつ、住居政策や麻薬取り締まりの強化、福祉削減といった一見人種中立的な政策によって黒人たちの家庭やコミュニティを破壊し、不正投票防止のためとしてさまざまな形で黒人たちの参政権を制限しようとした。

この「一見人種中立的な平等主義」に基づいた社会的合意の結実が2008年のバラック・オバマの大統領当選であり、そうした社会的合意の破棄が公に示されたのが2016年のドナルド・トランプの当選だった。著者が「第三のリコンストラクション」と位置づける2008年から現在に続く時代は、前期キング牧師からオバマに繋がれた「あるべきアメリカの理想の実現」が一定の成果を見せると同時にその限界を露呈し、後期キング牧師やマルコムX、ブラックパンサー党から現代の「1619プロジェクト」やブラック・ライヴズ・マター運動に繋がる、アメリカの歴史がリコンストラクションとリデンプションの両方の指向のあいだのせめぎ合いによって成り立っていることの認識をこれまで以上に一般化した。

著者はリコンストラクションをリデンプションを、歴史のなかの特定の時代とは解釈しない。それらはアメリカの歴史を通じて常に流れてきた二つの指向性であり、ある時代でどちらか一方がより強くなることはあっても、他方も常にそこに流れている。リコンストラクションの流れのなかでも著者は、ジム・クロウ時代起きた黒人のリンチ殺害について広く報道したアイダ・B・ウェルズや、ブラックパンサーの活動から反監獄運動に身を投じたアンジェラ・デイヴィス、ブラック・ライヴズ・マター運動を創設したアリシア・ガーザ、オパル・トメティ、パトリス・カラーズという三人の黒人クィア女性たちら、黒人女性の果たした役割に注目する。また2020年にブルックリンで行われ1万5000人もの参加者を集めた「ブラック・トランス・ライヴズ・マター」のデモを取り上げ、現代の黒人運動がクィアやトランスの黒人たちを含めたすべての黒人の命を守ろうとする運動へと発展していることを高く評価している。

2021年1月に起きた、南軍旗を掲げたトランプ支持者らによる連邦議事堂占拠事件は、第一のリコンストラクションを攻撃したKKKのリンチや、第二のリコンストラクションからキング牧師やマルコムXのような指導者を奪った銃弾などのリデンプション派による暴力の系譜に位置づけられなければいけない。かれらが不正投票があったと訴えているのが、アトランタ、フィラデルフィア、ミルウォーキーなど黒人の住民が多い地域の投票所であるのは偶然ではない。

すでにリコンストラクションや公民権運動の歴史についていろいろな本を読んできたわたしにとっては特に新しい発見はなかったけれども、それらの歴史が現在にどのように続いているのか、という観点からおさらいするという意味では良い本だった。