Matthew Rose著「A World after Liberalism: Philosophies of the Radical Right」

A World after Liberalism

Matthew Rose著「A World after Liberalism: Philosophies of the Radical Right

ここのところ欧米で猛威をふるった、オルトライトやアイデンティタリアンを自称する右翼過激派の思想についての本。ドイツの保守革命に関わったオスヴァルト・シュペングラーからアメリカのサミュエル・フランシスに繋がる一連の政治思想を紹介。文化的多様性は差異によって守られるのだから平等と多様性は矛盾する、リベラリズムは人々を文化や民族のつながりを持たない個人に還元する、白人欧米文化はキリスト教倫理によって普遍性を目指した結果政治的リベラリズムを生み出し自らの土台を解体してしまった、リベラリズムはマイノリティのアイデンティティ承認を進めつつ白人のアイデンティティを攻撃している、など、リベラリズムに対する強烈な批判が解説される。

実際にオルトライトの人たちがこれらの政治思想を読んで影響されているかというと、ごく一部のインテリ層だけだろって気がするんだけど、まあ左翼だってマルクスとか読んでるのはごく一部だよね。全体的にはもちろんどんなに取り繕っても人種差別やその他の差別主義が根強くあるんだけど、部分的にはなるほどと思わされる部分も多い。だからどう対抗するかというのは難しい。トランプ的なものに対抗するためにリベラルが積極的に白人アイデンティティの承認を進めるべきだ、とはやっぱり思えないし。著者はキリスト教倫理の側からの応答に期待してるっぽいけど、どうだろう。