Mary Ziegler著「Dollars for Life: The Anti-Abortion Movement and the Fall of the Republican Establishment」
1980年代から共和党内を侵食し支持を広げた政治資金規制反対論と反妊娠中絶中絶運動、すなわち大企業や富裕層とキリスト教原理主義という一見繋がりのなさそうな2つの勢力が、どのように関わり共和党エスタブリッシュメントの権力を瓦解させるに至ったかをたどる本。同じ著者の「Abortion and the Law in America: Roe v. Wade to the Present」では同じ時期において妊娠中絶をめぐる法的な攻防がどのように展開したかが解説されていたが、この本ではそこに加えて妊娠中絶反対勢力がどのようにして政治資金規制緩和によって議会への影響力を増やし政治に影響を及ぼそうとしたか、そして政治資金規制を大企業や富裕層の「言論の自由」に対する侵害だとしてその撤廃を訴える勢力がどのようにして妊娠中絶反対派を抱え込んで自分たちの政治目標実現に漕ぎ着けたかが語られている。