Justin Gregg著「If Nietzsche Were a Narwhal: What Animal Intelligence Reveals About Human Stupidity」

If Nietzsche Were a Narwhal

Justin Gregg著「If Nietzsche Were a Narwhal: What Animal Intelligence Reveals About Human Stupidity

哲学者ニーチェに角が生えてイッカクと戦っている表紙でジャケ買い(図書館で借りた)したけれど、動物の認知が人間とどう違うかという内容。人間にはものごとの因果を考えたり、通り未来のことを想定したり、自分以外の他人がなにをどう考えているのか察したりと、ほかの動物は(ほぼ)持っていない認知能力を持っているけれど、それを「知能が高い」とみなすのは人間中心の価値観ではないか、と著者。人間以外の動物は、そういった認知機構を持たずともそれと同じ働きをする形質を進化と単純なオペラント条件づけで獲得してきたし、むしろ人間は認知機能が発達しすぎたために大規模な戦争やジェノサイド、環境破壊、意図的なフェイクニュースの拡散などによって種の存続を脅かすまでになっている。

「もしニーチェがイッカクならホロコーストは起きなかったかもしれない」という著者の序盤の言明はニーチェの業績とナチスによる利用の歴史を踏まえてもあまりに唐突でそれを言ってもなあ、という気持ちだったけど、ニーチェだけでなく人類がイッカクのような認知機能を持っていたらたしかにホロコーストは起きていないし、ニーチェ個人ももっと幸せに生きられたかもしれない。