Chris Kohler著「How They Get You: Sneaky Everyday Economics and Smart Ways to Hold on to Your Money」

How They Get You

Chris Kohler著「How They Get You: Sneaky Everyday Economics and Smart Ways to Hold on to Your Money

サブスク、料理のデリバリー、車や住宅のローンから食品スーパー、健康保険、暗号通貨、ゲーム内課金などにおいて、企業が消費者からお金をむしり取るために使うさまざまな心理的・技術的なトリックを解説し、より賢い消費者になる方法を伝授する本。もともとオーストラリアで出版された本で、わたしはシアトル図書館に入荷されていたオーディオブックを借りてきたけど紙の本や電子書籍では入荷されておらず、国によってはオーディオブックだけ流通しているみたい。

年金制度や医療保険、不動産売買に関する部分についてはオーストラリアに特有の制度について書かれていてそれ以外の国の人にとっては「なんやそのけったいな制度は」と思うだけだけど、それ以外の部分はアメリカにも共通で、現代の資本主義において企業がさまざまなトリックを弄して消費者をミスリードして利益を挙げる仕組みがどれだけ蔓延っているかよく分かる内容。

本書には消費者に対するトリックを告発するポピュリスト的な政治性はあるのだけれど、あくまで個々の消費者の利害についてしか論じられておらず、たとえばガソリン代についての章や高速道路料金についての章などでは「消費者は高い料金を払わされている」ことばかり繰り返され、ガソリン消費や自動車社会に伴う環境への負荷や交通渋滞、都市の空洞化などの負の外部性については放置される。もちろんわたしたちの生活のために必要なコストは安ければ安いほど助かるわけだけど、社会的なコストに対して安すぎるのもまた問題なんだけどなあと。