Andrew Bacevich & Daniel A. Sjursen編「Paths of Dissent: Soldiers Speak Out Against America’s Misguided Wars」

Paths of Dissent

Andrew Bacevich & Daniel A. Sjursen編「Paths of Dissent: Soldiers Speak Out Against America’s Misguided Wars

米軍の一員としてイラク・アフガニスタンでの戦争に参戦したのち、反戦の立場に立った元軍人たちによる論集。編集者であるBacevichはヴェトナム戦争に従軍した経験のあるジャーナリストで反戦的な本を多数出版しており、日本語でも『アメリカ・力の限界』が出版されている。

寄稿している元軍人たちが軍に入隊した動機はさまざま。大学に行くための奨学金を得るためだったり、9/11事件のあと国を守るために貢献する義務を感じたり、自分を変えるためだったり。家族代々軍人の家庭に育った人もいれば、ヴェトナム戦争時代に反戦運動をしていた親に育てられた人も。どういった状況であっても、9/11事件の衝撃を経験し、少なからず自分たちはテロリストから国を守るための戦いに参加するのだと思ってイラクやアフガニスタンに派遣されてみたら、そこで見た現実はニュースが伝えるものとは大違い。多くの同僚が即席爆弾によって見えない敵に殺されたり重症を負うなか、仲間の多くが麻薬に溺れる。誰が敵なのかもわからないまま、捕虜の虐待や一般市民の殺戮が日常化してくる。戦場を経験した兵士たちが抱えるPTSDのなかでもやっかいなのは、組織の論理に流されて自分の良心に反する行為に参加してしまったことによるモラル・インジュリー(道徳的傷害)だ。

もちろん実際の戦争では、かれらアメリカ人よりはるかに多くのイラクやアフガニスタンの人たちが犠牲になっているし、アメリカがそれらの国の政府を転覆したせいで起きた内乱や混乱により亡くなった人たちの数を加えるとさらに桁が増える。そういった全ての犠牲者の声に耳を傾けるべきであることは当然のこととしたうえで、やはりアメリカ人は自分たちが選んだ政治家たちにより自分たちの税金で戦争に送り込まれた自国の若者たちの経験をもっと知るべきだと思う。