Aaron Bastani著「Fully Automated Luxury Communism: A Manifesto」
現在起きている技術革新によってマルクスが本来目指していた「働かなくても誰でも豊かな暮らしができる」共産主義的ユートピアがついに実現可能になりつつある、という本。わたし、ふだんは技術革新が悪用されて(というか十分に民主的に制御されないまま強者の利益追従のために利用されて)ひどいことが起きている、的な本をたくさん読むので、これだけ現代の技術に信頼を寄せている「エネルギーも資源も環境も医療も食糧も技術により希少性がなくなり全部解決できる!」みたいな本、逆に新鮮。もちろんそれは放っておけば実現するというものではなくて、というかむしろ既存の権力者や金持ちが自分たちの権力の源泉である希少性を温存するために技術を独占しようとするので戦う必要がある、という意味で、政治的。あまりに技術の可能性について楽観的だとしても、まあここに書かれているうちの1つか2つでも実現したらそれだけでもすごいので、政治的な主張については異論はない。でも機序がはっきりしているコロナワクチンですら変なデマを信じて反対する人がこれだけいるのになあって気も。日本語版も出ている。