Jer Thorp著「Living in Data: A CItizen’s Guide to a Better Information Future」

Living in Data

Jer Thorp著「Living in Data: A CItizen’s Guide to a Better Information Future

タイトルも表紙もつまらないのでめっちゃ舐めてたけど、 予想外の良書。著者はデータをヴィジュアライズするアーティストだけど(だからなおさら表紙がなんでこんな残念なのか気になる)、データヴィジュアライゼーションの本かと思ったらそうじゃなくて、誰がどういうデータをなんの目的で作るのか、そのデータは誰のもので、どういう風に使うことができるのか、という観点から、データの民主主義を訴える本。たとえばホームレスについてのデータを研究者が作ることで、研究者は出世するかもしれないけれど、そのデータはホームレスの人たちにどのような影響を与えるのか。そこにどういうバイアスがあり、どういう要素や人たちが観測対象から外れるのか、など多数の論点がある。

著者が目指すのは、マオリの活動家たちがニュージーランドの法律を通して勝ち取ってきた「データの主権」など、白人研究者や白人国家の搾取に抵抗してきた各地の先住民活動家たちの考えをお手本としたさまざまな仕組み。わたし、シアトルで政府によるテクノロジーやデータ・アルゴリズム利用に批判的なグループに関わっていて、そういう活動のなかでは警察や政府のデータ収集や使用に法律で制限を加える、というパターンが多いんだけど、民主的なデータ収集やデータ利用とは、という方向に進んだ議論はあまりしてこなかったので、とても参考になった。