Simon Knaphus編著「Seahorses: Trans, Nonbinary, and Gender-Expansive Pregnancy」

Seahorses

Simon Knaphus編著「Seahorses: Trans, Nonbinary, and Gender-Expansive Pregnancy

トランスジェンダーやノンバイナリーの人たちの妊娠についての経験をまとめたアンソロジー。なんでseahorse(タツノオトシゴ)なのか本の中では一切説明されないまま「シーホース・ペアレント」のように当たり前に使われているのだけど、タツノオトシゴのメスはオスの腹にある育児嚢という袋に卵を産み付け、それを稚魚になるまでオスが育てるという生態があり、オスが妊娠しているかのように見えるのでそこから取られたらしい。トランス業界のスラングでわたしが知らないものがあったとは。

本書はネット上のシーホース・グループ等で知り合ったたくさんの人たち(シアトル要素多め)の寄稿や対談で成り立っており、人工授精の苦労から、妊娠するのは女性だけだと決めつけた(そしてその上で女性を馬鹿にしたようなダサピンク全開の)医療やサポート体制の問題、テストステロンを服用していることから妊娠するとは思っていなかったのに起きた意図せざる妊娠、お前みたいなやつがいるから自分たちまで女性だと思われるというトランス男性やノンバイナリーの人たちからの反発などさまざまな話が集まっている。まあもっともな話やありそうな話ばっかりで、わたし自身には妊娠経験はないけど「わかるなあ、そうだよなあ」と思いつつ、予想を超えてこないというか、あんまりはっとすることは書かれていない的な。でも、これから妊娠・出産を考えている人、すでに妊娠した人たちにとっては貴重なリソースになりそう。