
Darrin Lunde著「Palace of Deception: Museum Men and the Rise of scientific Racism」
19世紀から20世紀初頭にかけて西洋で起きた自然科学の発達が世界各地に出向いての生物の収集やその分類・階層化、そしてそこに住む現地の住民やかれらの文化的アーティファクトの収集と分類などを経て、差別的な人種科学と優生学へとつながった歴史をたどる本。
一般庶民への科学的啓蒙と商業的利益の追求をかねて動物園が生まれ(そしてさらに歪んで)広まった経緯など興味深い話も多々あるのだけれど、ハーヴァード大学のキャンパスに今でも名前を残す著名な自然科学者であり、黒人が白人とは異なる種であると証明しようと黒人奴隷を利用したルイ・アガシ(Tamara Lanier著「From These Roots: My Fight with Harvard to Reclaim My Legacy」参照)をはじめ、さまざまな科学者や探索者らが登場し、それぞれ学問的な好奇心や利益などさまざまな動機や思惑で動いた結果、結局それが植民地主義を加速させ人種科学と優生学になだれ込んでしまうのは、やっぱりそうなっちゃうんだよなあと。
本書ではこのように、自然科学や科学者や探索者が収集したアーティファクトを集めた博物館の設立・運営を行った人がたまたま当時のほかの人と同じ程度に差別主義者だったというのではなく、Eunsong Kim著「The Politics of Collecting: Race and the Aestheticization of Property」が論じているように、自然科学の営みやアーティファクトの収集、博物館という制度そのものに植民地主義や人種資本主義が深く内包されていることが歴史的事例をもとに示されている。