Yossi Yovel著「The Genius Bat: The Secret Life of the Only Flying Mammal」
神経科学者で生態学者の著者が、専門の一つとするコウモリとその研究について愛を持って語りまくる本。空を飛ぶ唯一の哺乳類であり、哺乳類に分類される種のうちの2割を占めるほど多様なコウモリだけど、暗いところに住み一部に吸血する種があることやエボラやコロナウイルスなどが人間に感染する経路となることなどから敬遠されがち。でも本当はこんなにかわいくてすごいんだよ!という内容。
コウモリのすごいところと言えば、社交性があり群れを作ることや、音や超音波を出しその反響で周囲の環境を把握する能力。たくさんの小さなコウモリが一斉に飛びながらどうしてぶつからないのか、そんな混み合ったところでどうやって自分が出した音の反響を聴き分けるのかなどといった疑問が、さまざまな研究によって検証されていくけれど、なかには「まさかあんな小さな動物にそんな優れた機能があるはずがない」と研究者たちにデータが間違っていると思われてしまったりも。小さいものはGPSトラッカーを取り付けることができないほど小さいのにものすごい距離を移動できるし、何十年も生きるものもいるなど、まじすごい。
また本書には本文に登場するブサ可愛いコウモリたちの写真がたくさん掲載されていて、見ているうちにどんどん可愛くなっていく。コウモリがエボラやコロナだけでなく多数の感染症の経路となるとされているのはコウモリの免疫が異様に強くて細菌やウイルスに触れてもなかなか死なずに感染を広げてしまうせいなんだけど(ていうかそもそも人間がコウモリの生育環境を脅かさなければ向こうから人間に近づいてこようとはしない)、逆にその免疫の仕組みを解明して感染症予防や治療に役立てようという動きもあるらしく、天才コウモリ先生に期待したい。