Tyler Stovall著「White Freedom: The Racial History of an Idea」
「自由と平等」を掲げながら、ジェノサイドと奴隷制を存続させたアメリカ独立戦争や、アフリカやアジアでの植民地を拡大したフランス革命。これらの事例は矛盾や言動不一致としてではなく、むしろ自由や平等といった概念が、非白人の身体や労働や土地や資源に対する白人の所有権と支配権と密接につながっていると指摘。
たとえばアメリカ独立宣言では宗主国であるイギリスに対する不満として、アメリカで内乱を起こそうとしている、アメリカ人の財産を奪おうとしている、という理由が述べられているけど、これはイギリスで当時奴隷解放の動きが強まっており、黒人奴隷という所有物の所有権を勝手に奪うのではないか、自分たち白人奴隷所有者たちへの反乱を起こさせるのではないか、アメリカ人に対するそのような圧政は許せない、という訴え。しかもイギリスの圧政を批判する文脈において、アメリカの白人たちは頻繁に「イギリス政府はわれわれの自由を奪い、奴隷のように扱っている」と訴えており、自分たちが権利として主張する実際の奴隷制を擁護しながら、その廃止を比喩的に自分たちに対する奴隷制と呼んで非難する始末。
このような例が18世紀から現代まで多数挙げられ、白人たちが主張する「自由」というレトリックが非白人には平等に適応されないばかりか、逆に非白人の自由を奪う方向に働いてきたことがこれでもかと示される。著者はフランス史を専門とする黒人歴史学者で、アメリカ歴史学会の会長も務めた人。