Sophie Lewis著「Full Surrogacy Now: Feminism Against Family」

Full Surrogacy Now

Sophie Lewis著「Full Surrogacy Now: Feminism Against Family」

国際的代理出産産業とそれへの先進国のフェミニストたちによる批判の分析を通して現代資本主義における労働力再生産の仕組みとそれによって成り立つ「家族」の解体を訴える本。シュラミス・ファイアストーンは出産の機械化を主張したことで知られているけれども、彼女が提唱したのは単に現行の家族制度のなかで妊娠・出産の負担から女性を解放することではなく、子育ての社会化を含めた家族制度そのものの変革だった。本書はファイアストーンからハラウェイに続くマルクス主義フェミニズムの系統や、オクタヴィア・バトラーやアレクシス・ポーリーン・ガムズらのアフロフューチャリズムと交錯するブラックフェミニズムの流れなど幅広い伝統に触れつつ、ケアの共産化を主張する。

って何言ってるかわけがわからない人がほとんどだと思うけど、ラディカルすぎてほんとにわけがわからないから、そういうのにグッとくる人は是非読んで。ただそういう理論的な部分はさておいても、彼女がSERFと呼ぶ先進国の「代理出産排除ラディカルフェミニズム」への批判や、逆に先進国の「リーン・イン」型リベラルフェミニズムにもてはやされているインドの「先進的な」代理出産産業についての批判的な検証など、代理出産問題そのものについても整理された議論が含まれている。最後の2章あたりまで読んでようやく、この本は代理出産についての本ではなくて、代理出産をその一つの極端な例とする資本主義における労働力再生産の政治についての話なんだと気づいたけど(関連した話題でElizabeth Cummins Muñoz著「Mothercoin: The Stories of Immigrant Nannies」も参考に)、どちらの部分も刺激的な内容。