Shayla Lawson著「How to Live Free in a Dangerous World: A Decolonial Memoir」
何をされている方なのかよくわからないけれどもケンタッキーで生まれ育ち何故か世界中を旅している(あるいは移り住んでいる)黒人フェム・ノンバイナリーのライターによる、旅行記のようなエッセイ集のような本。いちおー、ウィキペディアによると詩人でライターらしい。
オランダ人の男性と結婚してオランダに住んだり、独裁者を退陣させたジンバブエの人々と交流したり、東京で暗黒舞踏の舞台を見たりと、居住者だったり旅行者だったりして世界中を渡り、それぞれの土地でアメリカ出身の黒人として見られること、女性として見られること、そして目に見えない障害をめぐる周囲の無理解をやり過ごしたりやり過ごせなかったりすること、そして愛や人生をめぐる普遍点的なことなどが、各章ごとに掲げられたテーマのもとにまとめられている。文体は心地いいし、内容の多彩さもあって読後感は良いのだけれど、副題の「脱植民地的自叙伝」という部分だけ引っかかる。先進国の経済的余裕のある人が自分の住んでいる社会に飽きて世界各地をめぐり現地の文化に触れながら人生の真実を学ぶ、というのはよくある植民地主義的エッセイのように思えるのだけれど、その著者が黒人でありフェム・ノンバイナリーだったら脱植民地的なのか?と考えると、よく書けた本だとは思うけれどもよくあるパターンをひっくり返すほどではないような気がする。