Sasha taqʷšəblu LaPointe著「Thunder Song: Essays」
先に紹介している自叙伝「Red Paint: The Ancestral Autobiography of a Coast Salish Punk」や詩集「Rose Quartz: Poems」が評価されている先住民コーストセーリッシュ(シアトルを中心とするワシントン州西部)出身のクィア女性アーティストによる三冊目。
サブタイトルにはエッセイ集と名打たれているけれど、「Red Paint」に書かれていなかった時期についての追加の自叙伝の性格が強く(いわゆるエッセイらしいエッセイは本書の中でも1つか2つだけだった)、「Red Paint」のボーナストラック的な印象。自民族の言語や音楽を守ろうとする家族の話や、白人とのミックスであるせいで家族の中で自分だけ白人としてパスできる明るい色の肌を持つことの意味、アルコール依存から快復しようとしている母親との複雑な関係、ライオット・ガール運動に出会って白人だらけのシアトルのパンクシーンやアートシーンに入り浸ったけれどそれらの限界に直面した話、ベジタリアンのコミュニティに参加しつつも自分の文化で重要な意味を持つサーモンだけは隠れて食べた話など、「Red Paint」に引き続き退屈な部分が一切なく一気に読ませる内容。
「エッセイらしいエッセイ」の一つとなる最終章では、ライター・詩人・アーティストとしてニュージーランドやハワイ、グアムなどの先住民のアーティストや活動家たちとの交流が描かれており、それぞれのアーティストの名前がフルネームでは書かれていないけれど分かる人には分かる(「Poūkahangatus: Poems」著者のTayi Tibbleさんや「No Country for Eight-Spot Butterflies」著者のJulian Aguonさんら)。もちろん、分からなくてもおもしろく読め、勉強にもなる。著者は現在タコマに在住していて、シアトル周辺の文学シーンやアートシーンで活躍しているのでよく見かける機会があり、わたしもすっかりファンになっている。