Sara Ahmed著「The Feminist Killjoy Handbook: The Radical Potential of Getting in the Way」

The Feminist Killjoy Handbook

Sara Ahmed著「The Feminist Killjoy Handbook: The Radical Potential of Getting in the Way

フェミニスト・キルジョイことサラ・アーメッドせんせーが全てのフェミニスト・キルジョイに送る待望のハンドブック。アメリカでの発売は10月だけど待ちきれないので既に出版されたイギリス版をもらってきた。でも表紙画像とサブタイトルはアメリカ仕様。英語では「Living a Feminist Life」として出版された本が日本では「フェミニスト・キルジョイ」と改題されて出版されているのでややこしいけど別物。

キルジョイとは文字通り自分や他人の幸福を邪魔する存在。全てのキルジョイは必ずしもフェミニストではないけれど、フェミニストがフェミニストとして生きるとどうしても周囲の幸福を脅かしてしまう。差別的なジョークに笑わない、セクハラに抵抗したり告発したりする、自分のセクシュアリティを隠さない、期待される性役割に従わない、など。場合によっては白人だけの場に黒人が一人入ったり、女性の集まりの中にトランス女性が混ざる、イベントの会場に車椅子で入れるか質問するなど、存在するだけでその場の雰囲気をぶち壊すキルジョイとして敬遠されることも。本書では、フェミニスト・キルジョイが世の中にどのように関わり、どう生き抜いていくか、過去や現代のキルジョイたちの言葉を交えつつ、読者を案内していく。

本書では、著者が住んでいるイギリスで保守派によるトランスジェンダーの人たちへの迫害に加担することをフェミニスト・キルジョイだと履き違えている一部のフェミニストたちに対する批判が繰り返されるけど、かれらはフェミニストではないというのではなく「フェミニスト・キルジョイではない」と主張するところが独特。全体を通して言葉遊びとウィットに富んだフェミニスト・キルジョイの格言、フェミニスト・キルジョイの誓い、フェミニスト・キルジョイの定理が披露されており、巻末にはまとめてあるのもおもしろい。