Ryan Grim著「The Squad: AOC and the Hope of a Political Revolution」

The Squad

Ryan Grim著「The Squad: AOC and the Hope of a Political Revolution

アレクサンドリア・オカシオ=コルテス議員(AOC)をはじめとする左派・進歩派議員グループ「スクワッド」の本。著者はAOCを初期から追っていた左派系ジャーナリスト。

2018年の予備選挙で次期下院議長と目されていた現職を破り初当選したAOCとその同期3人で結成された(というかツイッターでジョークとして4人の顔写真を載せたら議員グループと認識されてしまった)スクワッドも2020年(コリ・ブッシュ議員ら)と2022年の当選組を含めていまでは8人に。しかしスクワッドは実際には組織でもなければグループとして会合を行うこともなく、それぞれの議員が自分の考えで動いているだけなのに、メディアなどによって過大評価されたうえに激しいバッシングにさらされたりも。

スクワッドの登場を語るうえで欠かせないのが、2008年の金融危機からウォールストリート占拠運動につながる若者の資本主義への不信と、それに応えてブームを巻き起こした(というか何十年も前から淡々と同じことをやってたらようやく時代にバッチリハマった)バーニー・サンダース上院議員による大統領選挙への挑戦。社会民主主義を掲げ健康保険制度などの大規模な改革を訴えるサンダースは、次はヒラリー・クリントンの番と決めていた民主党有力者から総攻撃を受け、その結果、民主党の選挙運営のプロたちは「サンダース陣営で働いたら今後民主党のほかの陣営では二度と雇ってもらえない」と判断して近寄らなかった。かわりにサンダースのもとに集まったのは、経験は不足しているけれど熱意だけある若者たち。かれらがサンダースの選挙運動で経験を積み、サンダースの選挙撤退後はかれが目指した変革を実現するために各地でさまざまな活動をはじめた。

ブランド・ニュー・コングレスやジャスティス・デモクラッツのように進歩派議員候補を支援するグループや、気候変動問題を訴えるためにAOCとともにナンシー・ペロシ下院議長のオフィスを占拠したサンライズ・ムーブメント、アメリカ社会民主党などはAOCやスクワッドのメンバーを支援したり行動を共にすることがあったのでメディアではそれらはイコールで結び付けられがちだけれど、スクワッドの議員たちはそれぞれ独立していてペロシら民主党主流派との距離や関係もそれぞれだし、かれらと関係が近いとされるグループもそれぞれ活動家として自分たちの考えで動いているので、そんなに同じグループっぽい感じではないのが本書からは分かる。スクワッドの中でもAOCやブッシュのようにもともと政治家ではなかった人と、アヤナ・プレスリーのようなキャリア政治家のあいだにも溝があるし。さらにそこに、スクワッドに入るのは拒否しつつも大所帯となっている進歩派議員連盟のトップとして独自の舵取りをしているプラミラ・ジャヤパル議員もいるし、政治って難しい。あとAOCはペロシら主流派とのあいだに「意見の違いはあってもお互いリスペクトを持とう」みたいな関係を築きたいのに相手に拒否され、おまけに主流派に妥協していると活動家たちからも批判されたりして孤独な感じがかわいそう。

イスラム教徒で常に「反ユダヤ主義」とか「テロ支援者」と叩かれるイルハン・オマル議員やラシダ・タリーブ議員をはじめスクワッドのメンバーの多くはイスラエルによるパレスチナ占領政策に批判的で、かねてからイスラエル系ロビーおよびそれと協力関係にあるサウジアラビア系、アラブ首長国連邦系のロビーはスクワッドを敵視してきたけれど、10月いらいイスラエルによるガザへの侵攻と人道危機が深刻化するなか、かれらがスクワッドを狙い撃ちして落選させようという動きは強まっていて、来年の選挙でどれだけ生き残れるかわからない。AOCと並んで選挙区にユダヤ系住民が多いジャマル・ボウマン議員は以前からパレスチナ問題についてはスクワッドの他のメンバーから少し距離を取り慎重な発言をしてきたのだけど、それでもものすごく叩かれている。そうでなくても化石資源産業や金融業界などからスクワッドは敵視されているし、人種差別や性差別丸出しでAOCらを攻撃する右派メディア、さらには民主党主流派からも邪魔者扱いされているわけだし。

わたし、プレスリー議員推しなんだけどスクワッドという箱はそうでもなくて、てゆーかAOCはそれほど好きじゃない(この本を読んで少し好感度上がった)のだけど、かれらのような議員が無視できない数存在することは必要だと思うので、かれらが登場できる土壌を作ったサンダース(この人も人間としては好きだけど政治家としてはそうでもない)はすごかったんだなあと思う。