Ronald J. Deibert著「Reset: Reclaiming the Internet for Civil Society」

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Ronald J. Deibert著「Reset: Reclaiming the Internet for Civil Society

トロント大学でテクノロジーと人権の関係の研究をしているCitizens Lab所長による本。テクノロジー企業やそれらを通した各国政府による民主化・人権活動家の監視や弾圧についての記述は実際にそうした活動家たちを支援している(そしてそのせいで一部の政府からCitizens Lab自体が工作対象とされた)経験に裏付けられていてとても興味深いいっぽう、ソーシャルメディアによる社会関係の希薄化やインターネット文化を支えるための環境への負荷など雑多な内容も含まれていて、それぞれ大切な話だとは思うのだけれど、まとまりがない感じ。それらを踏まえて「どうすればいいか」という結論の部分では、こういう提案もあるがこういう懸念もあり〜という話が続き、まあ研究者として真摯な立場なのだとは思うけど、結局必要なのは抑制(restraint)だ、それは民主主義の根本そのものだ、と言われてもと。企業や政府の影響力や権力を抑制するだけでなく、スマホやソーシャルメディアの使用を抑制しよう、環境破壊を抑制しよう、という話なんだけど、それぞれに必要な手法は違うよね… まあなにごとにも抑制が必要だ、という当たり前すぎる話。