Ron Eyerman著「The Making of White American Identity」

The Making of White American Identity

Ron Eyerman著「The Making of White American Identity」

タイトルそのままだけど、白人アメリカ人のアイデンティティが歴史的にどのように形成されてきたか、という内容の本。社会学者の本はこれくらい味気ないタイトルでいいと思う。

内容的には、南北戦争後のリコンストラクションへの反動として起きた白人至上主義復古の動きであるリデンプションから、20世紀の公民権運動への反発、オバマ大統領の当選やブラック・ライブズ・マター運動に対抗して起きたティーパーティー運動やトランプ政権下の白人至上主義運動の表面化、そして連邦議事堂占拠事件まで、「ふつうのアメリカ人」こと白人アメリカ人のアイデンティティが黒人やその他の非白人たちの権利獲得の動きに対抗する形で生まれ、広まってきたことを示す内容。最近読んだPeniel E. Joseph著「The Third Reconstruction: America’s Struggle for Racial Justice in the Twenty-First Century」やその他多数の本に書かれている内容と重複しているけれども、もともとイングランド人など個々のヨーロッパの土地や文化と結びついたアイデンティティを持っていた白人たちが、非白人たちとの衝突や権利主張を通して「白人」としてのアイデンティティを獲得していく様子が丁寧に描かれているのは良い。

また本書の、Sarah Churchwell著「The Wrath to Come: Gone with the Wind and the Lies America Tells」で詳しく論じられている「風とともに去りぬ」をはじめとした小説や映画(南北戦争ものやウエスタンなど)、カントリーミュージックなど文化面における白人アイデンティティの形成についての記述もおもしろい。Talia Lavin著「Culture Warlords: My Journey into the Dark Web of White Supremacy」に書かれているようなインターネット上の白人至上主義のコミュニティの話も。