Peter S. Goodman著「How the World Ran Out of Everything: Inside the Global Supply Chain」

How the World Ran Out of Everything

Peter S. Goodman著「How the World Ran Out of Everything: Inside the Global Supply Chain

コロナウイルス・パンデミックによるロックダウンにより発生し、パンデミックが落ち着いても延々とあとを引いている「サプライチェーン問題」がどうして起きたのか、ニューヨーク・タイムズの国際経済記者が解説する本。

パンデミックの序盤、世界各地でロックダウンが行われ、工場は閉鎖、労働者は自宅待機を命じられたことで流通がストップしたところまでは分かりやすい。しかし品薄状態は長引き、先進国で赤ちゃん用の粉ミルクが足りなくなりパニックが起きるなど影響は続く。ひとまとめに「サプライチェーン問題」として語られる高度に発達した世界経済システムにおけるグリッチは、トヨタ自動車が導入したジャスト・イン・タイム生産システムなど効率化の取り組みが部品や原材料の在庫管理だけにとどまらず、労働力や流通キャパシティの管理など経営の隅々まで行き渡った必然的な結果であり、パンデミックはその脆弱性が明らかになるきっかけに過ぎなかった。また、多くの業界では少数の企業が独占的な地位を得ており、品薄に便乗してさらに供給を減らすことでより多くの利益を得ようとしたことも問題が深刻化した原因の一つだった。

本書は原材料の生産から工場、陸上・海上運輸、工場労働者やトラック運転手、港湾労働者、倉庫、店舗、その他サプライチェーンに関わるさまざまな人たちの状況とともに、ある商品が生産地から消費者のもとに届けられるまでの流れも丁寧にまとめてある。終盤ではジャスト・イン・タイム方式の脆弱性をカバーするためのジャスト・イン・ケースの取り組みも紹介しつつ、しかしたとえば中国に生産拠点を置くことのリスクを回避するためにヴェトナムやインドに工場を移してもそれらの工場は中国産の部品や器具がなければ運用できずさらにサプライチェーンを複雑化してしまうだけに終わっている例なども指摘。てゆーか世界やばい。