Nesrine Malik著「We Need New Stories: Challenging the Toxic Myths Behind Our Age of Discontent」

We Need New Stories

Nesrine Malik著「We Need New Stories: Challenging the Toxic Myths Behind Our Age of Discontent

ポリコレやアイデンティティ政治やフェミニズムの「暴走」など、保守派が変化を妨害するために生み出したさまざまな「神話」が、リベラル派のはずの白人男性の政治家やジャーナリストによって無批判に受け入れられ、さらに拡散されていることを批判する、スーダン出身のイギリスの女性ジャーナリストによる本。イギリスよりアメリカよりの内容だけど、もしかしたらイギリス版とアメリカ版で内容違うかも。

女性運動やマイノリティ運動は保守派によって、排他的で他者を差別主義者と糾弾し、極端な権利を要求し、異論を許さず言論の自由を認めない全体主義者として描かれる。そのほとんどは、事実に基づかないカリカチュアか、ごく特殊な例を過大に宣伝しているだけすぎないけど、それらの運動に口先で支持を寄せつつもそれ以上の関心のないリベラル白人男性の多くは、保守派が生み出したカリカチュアに抵抗するのではなく、自分ももちろんそういう極端な運動には反対だと言って逃げ出すことで、カリカチュアを共有してしまう。そうなると白人男性だけでなく女性やマイノリティ本人も同様に「自分はフェミニストだが、こういうフェミニズムはおかしい」と表明させられ、カリカチュアが議論の前提となるばかりでなく、本来その運動が主張していた問題から「どういう運動なら過激ではないのか」に議論が逸らされる。それこそがカリカチュアの目的。乗せられないように気をつけないと。