M.E. O’Brien著「Family Abolition: Capitalism and the Communizing of Care」
トランスジェンダー女性のマルクス主義理論家による家族廃止論の本。去年もらったけど読めてなかったのでいまさらだけど読んだ。
マルクス主義はブルジョア的な家庭を否定し、本書もその論理を追っているが、しかしマルクスやエンゲルスは労働者階級の家庭のなかにも暴力や支配が存在することから目を逸らしていた。また一方、奴隷制度による家族の離散や先住民に対する文化的ジェノサイドを目的とした寄宿学校制度、そして現在も続く人種差別的な大量収監や移民排斥による非白人の家庭、クィアやトランスの家庭に対する攻撃など、特定の家庭に対する攻撃が暴力的な支配の手段となっていることも見逃せない。著者は既にある絆を否定するのではなく、むしろより多様な絆を尊重し、また絆が得られなくてもケアを受けることができるような世の中にするために、2006年にメキシコで生まれたオハカ・コミューン運動を参照しつつ、より良いケアと絆のあり方を訴える。
本書はSophie Lewis著「Abolish the Family: A Manifesto for Care and Liberation」やHelen Hester & Nick Srnicek著「After Work: The Fight for Free Time」に続いてフェミニスト社会再生産論を進める内容。わたし的にはちょっとマルクスが頑張りすぎてて読みにくいのだけど、パワーはある。シアトルのWTOプロテストをはじめ多数のプロテストや占拠運動に参加していた話もおもしろい。