Lauren Elkin著「Art Monsters: Unruly Bodies in Feminist Art」

Art Monsters

Lauren Elkin著「Art Monsters: Unruly Bodies in Feminist Art

長年パリに在住しロンドンに移住したアメリカ出身のフェミニスト批評家によるフェミニスト・アートにおける身体性と怪物性についての本。わたし、批評系の本の紹介は苦手なんだけど、これは本当におもしろい。トランス女性のアーティストについても当たり前にカバーしている。

それまでの(男性による)アートの歴史の中で性的対象とされた、あるいは理想化された客体として描かれていた女性の身体を、ヴァージニア・ウルフから現代までのフェミニスト・アートの制作者たちがどのように描きなおしたか、そしてClaire Dederer著「Monsters: A Fan’s Dilemma」にも書かれているように女性がフェミニストとしてアートを手掛けることによって、また男性アーティストの視線による客体としてではない女性の身体を描くことによって帯びる「怪物性」をどう体現するか、といったテーマで、多数の実例を上げながら分析を進める。

怪物的なアーティストについての本を書いている、と言うたびに「例えば?」と聞かれた著者が、一般的にわかりやすい例として作家のキャシー・アッカーを挙げるとみんな「ああなるほどね」となるんだけど、著者自身はアッカーの扱いに困ったらしく、最後の最後でアッカーの姿勢の二面性についての議論があり、わたしにとってもアッカーはどう扱ったらいいかわからない作家の筆頭なので興味深かった。言及されている作品の写真も豊富で知らなかった作品もいくつか知ることができた。