Larry Krasner著「For the People: A Story of Justice and Power」

For The People

Larry Krasner著「For the People: A Story of Justice and Power

2017年の選挙で初当選し、今日の民主党予備選に勝利したことで再選をほぼ確実にしたフィラデルフィア検事の本。先月出版されて、選挙までに読むつもりだったけど選挙当日になってしまった。クラスナー検事はこの数年全国で増えてきている改革派検事の一人。改革派検事については以前紹介したEmily Bazelon著「Charged: The New Movement to Transform American Prosecution and End Mass Incarceration」参照。

ACT-UP、オキュパイ、BLMなどの運動を守る活動や人種差別的な刑事司法制度によって不当に扱われている刑事被告人らの弁護活動の経験から、刑事司法制度を改革するには検察を変えなければいけないと確信して市検事長に立候補、それまで検事選挙に関心がなかった層の動員に成功して当選。前回の選挙では汚職により再選を断念した現職の後任を狙って多くの候補が立候補したなかうまく勝ち上がったけど、今回は現職として「検察改革によって犯罪が増えた」と批判する守旧派の元検察官と一騎打ちで戦うことになり、大手メディアもその論調だったので心配したけど、終わってみれば圧勝。検察改革の代表者の一人と目されているクラスナーが落選したら、全国的に検察改革の動きが失速するおそれがあったので、とても安心した(もっともまだ予備選に勝っただけで本戦は先だけど、フィラデルフィアは民主党一党なので予備選のほうが本番)。

本の内容は初当選までなので、就任してからの話は書かれていない。学生時代や弁護士時代にさまざまな人たちに触れ合って不公平な刑事司法が人々の人生に与える影響を学んだ話や、検察・警察・判事のリアルな癒着や不正の話がおもしろい。あとフェミニズム理論家のケイト・ミレットと親戚だったのは知らなかった。