Kelly Hayes & Mariame Kaba著「Let This Radicalize You: Organizing and the Revolution of Reciprocal Care」

Let This Radicalize You

Kelly Hayes & Mariame Kaba著「Let This Radicalize You: Organizing and the Revolution of Reciprocal Care

シカゴで反監獄運動などに長年関わってきた著者らが、ジョージ・フロイド氏殺害をきっかけに起きたブラック・ライヴズ・マター運動の世界的な活発化やコロナウイルス・パンデミックのなか広まったミューチュアルエイド(相互扶助)の活動、そして激しくなる気候変動の影響を受けここ数年で新たに社会運動に参加した人たちに向けて書いた本。

著者の一人は若いころ、選挙運動や非営利団体、その他の社会運動に対してシニカルに向き合い、フランツ・ファノンやマルコムX、カール・マルクスなどを引用し、あれが駄目だ、ここが良くない、と批判する左翼インテリに憧れていた。しかしあるとき年配の活動家に「ではあなたは何を作っているのか?」と問われ、自分が口先でもっともらしいことを言って他人の活動にケチをつけるだけで、何も生み出していないことに気づく。その後その活動家は彼女のメンターとなり、彼女はのちにその長い活動家歴のあいだにさまざまなプロジェクトを立ち上げ、反監獄運動のリーダーの一人と見なされるまでになる。

本書ではそうしたベテラン活動家の立場から、危機感を煽ることの弊害、運動のなかでお互いをケアすることの大切さ、何が「暴力的」であるのか体制側が定義することを許すことの危険、個々のリーダーを理想家して持ち上げることの問題など、著者たちをはじめとする非白人の女性やクィア&トランスの活動家たちが学んできたさまざまなレッスンが惜しげもなく提供されている。

本書はただ読まれるだけでなく、議論され、実践されるべき本。そのための補助として本書は副読本のワークブックが別に出版されたほか、学習ガイドやその他のリソースも提供されている。本を出すだけでは終わらせず、それを今後の運動につなげるための戦略がきちんとあるのがすごい。