Kate Crawford著「Atlas of AI: Power, Politics, and the Planetary Costs of Artificial Intelligence」

Atlas of AI

Kate Crawford著「Atlas of AI: Power, Politics, and the Planetary Costs of Artificial Intelligence

人工知能の社会的影響とともに、それを成り立たせている物質的な素材、エネルギー、労働、データなどの面から広くその社会的側面と隠されたコストを分析した本。人工知能テクノロジーは社会的文脈から独立した中立的な技術として存在しているのではなく、現実の環境的限界や労働搾取、政治的権力関係のなかで形作られている。著者によれば人工知能の本質は資源・労働・人々の行動を元にしたデータの抽出であり、そこを踏まえないままテクノロジーに社会的問題の解決を期待することは、意図せずともその搾取的性質をのさばらせ、人権や民主主義を脅かしてしまう。

人工知能のさまざまな側面のうち、テクノロジーについてはErik J. Larson著「The Myth of Artificial Intelligence: Why Computers Can’t Think the Way We Do」、労働についてはPhil Jones著「Work Without the Worker: Labour in the Age of Platform Capitalism」、社会的影響についてはRuha Benjamin著「Race After Technology: Abolitionist Tools for the New Jim Code」などさまざまな文献が最近出版されているが、それらの全体図を示してくれる、まさに「AIの地図(Atlas of AI)」というタイトルにふさわしい本。