Gretchen Whitmer著「True Gretch: What I’ve Learned About Life, Leadership, and Everything in Between」

True Gretch

Gretchen Whitmer著「True Gretch: What I’ve Learned About Life, Leadership, and Everything in Between

一部ではバイデン大統領に代わって民主党の大統領候補にという声もあるミシガン州知事の本。バイデンがトランプとのテレビ討論で失敗してバイデン降ろしの声が高まっているちょうどいいタイミングで出版された。短め。

まあなんというか、普通?著者はバイデンと同じく民主党内の中道派・穏健リベラルに属する人で、しかもミシガン州は民主党寄りとはいえ選挙のたびに接戦が繰り返される激戦州の一つなので、当然のことながら過激な発言やスキャンダラスな内容はない。どれだけ人々の生活に寄り添った政治を心がけているかとか、こういうミスをしたけどすぐに認めて謝ったとか、基本的にいい話。

コロナ対策を頑張った結果、トランプが「ミシガンを解放せよ!」とツイッターで宣伝するなどして暴力的な抗議活動を煽り、極右武装集団によって誘拐・殺害されかけた、というヘヴィな話題や、妊娠中絶問題に関連して過去に性暴力の被害を受けたことをカミングアウトしたこと、メディアが彼女のスピーチの内容より服装を論評したり「あなたは女性として立候補していますか?」という男性には絶対聞かない質問を受けたときの話なども、しっかりその不当さを指摘しつつ、しかし女性政治家に対する攻撃としてありがちな「ヒステリック」「被害者ぶっている」という批判を受けないように気をつけて扱っていることが読み取れる。そういうなか、民主党全国大会のスピーチをする前のマイクチェックで月経中であることを表現するスラングを口にしてカルト的な人気を得たエピソードについてより詳しい背景を知ることができたのが一番の収穫。

もし本を出版するタイミングで政界引退するつもりだったなら、その時の発言「シャーク・ウィーク、マザー*****」がこの本のタイトルになっていて、10倍売れていたはずだけど、今回バイデンの代わりになるかどうかはともかく彼女は次の大統領選挙での民主党の最有力候補の一人なので、さすがにそうしなかった。てゆーか大統領選挙の年に出版される自著で飼い犬を射殺したエピソードを書いて副大統領候補に選ばれるチャンスをふいにした別の州の知事の方がどうかしてる。