G. Elliott Morris著「Strength in Numbers: How Polls Work and Why We Need Them」
エコノミスト誌の記者による世論調査についての本。2016年と2020年の大統領選挙でともにトランプへの支持を実際より低く見積もって信頼を失った世論調査だけれど、それでも世論調査は民主主義のために必要だと著者は主張する。とうてい科学的とは言えなかった初期の世論調査から、サンプリングの偏りを修正するためのさまざまなテクニックが開発された経緯まで、世論調査は科学的手法として徐々に発展しながら政治に影響を与えてきた。世論調査の真骨頂は選挙結果の予測ではなく、選挙と選挙のあいだに人々の意見を政治に反映させる一つの経路としての役割。しかし世論調査が民主主義を支える仕組みとして有効に機能するには、人々が世論調査の意味するところをその限界とともによく理解し、また世論調査を行う機関が共通のルールに従う必要があるとして、その悪用や濫用にも警告する。まあ結論としては当たり前のことを言っているわけだけど、過去にどういう失敗があってどのように修正してきたか、という歴史はおもしろい。