
Eve Rickert著「Nonmonogamy and Betrayal」
一夫一妻・一対一の関係に縛られない合意ある関係性を指向するノン・モノガミーのなかで起きる「裏切り」についての本。
ノンモノガミーにもさまざまな形態があるが、合意ある関係性であればなんらかのルールがあるのが普通。たとえば他の人と付き合ってもいいけれど一応紹介しろとか、逆に鉢合わせないようにするべきだとか、性病感染を防ぐための手段を取り情報を共有する、など。ノンモノガミーの関係にある人がそうしたルールに違反することは、モノガミーの関係にある人たちがパートナーに内緒で浮気をするのと同じく「裏切り」だと言えるが、本書が主に主題とするのはそうしたルール違反のことではない。ていうかルール違反の話であれば「ルール違反はダメ」で終わる話でもある。
本書が注目する「裏切り」とは、明白にルールに違反しているというわけではないけれど、関係性へのコミットメントに対する信頼が損なわれるような、ふんわりと違和感のある行動。それはたとえば、自分はダンスは苦手だからとダンスパーティへの出席を断っていたパートナーが別のパートナーと一緒に楽しくダンスを踊っていたとか、ノンモノガミーの関係に合意したはずだけど相手は無理をしていて実際には束縛したい空気をひしひしと感じるとか、そういったもの。もちろんそういった「ルール違反とまでは言えない裏切り行為」はモノガミーの関係でも起こり得るけど、ノンモノガミーの関係においては他のパートナーという比較対象があるせいで「あの人はいいのにどうして自分は」という思いが生じやすいのかもしれない。
本書はノンモノガミーについてのある特定のトピックを扱う短い本のシリーズの一冊で、過去には「ノンモノガミーとセックスワーク」、「ノンモノガミーとニューロダイバーシティ」、「ポスト・ノンモノガミー」の3冊を紹介している。ていうか短いから手を出しやすいんだよなあ。こういう出版形態、一冊一冊がそこそこ売れないと打ち切りになる危険もあるけれど、誰か一人がエキスパートとしてある分野の全体をカバーする必要はないし、これまで本を出したことがない人にも負担をかけることなく執筆の機会が広がるので、わりと参考になるような気もする。