Ellie Yang Camp著「Louder Than the Lies: Asian American Identity, Solidarity, and Self-Love」
台湾出身の両親を持つ著者が、アジア系アメリカ人としてのアイデンティティを模索しているときに「あったら良かった」と思う本を自分で書いたもの。
本書でも説明されているとおり、アジア系アメリカ人というアイデンティティは黒人による公民権運動の影響を受け、政治的に生み出されたものだ。アジア系アメリカ人という社会集団は、アジアのさまざまな文化を背後に持つ移民やその子孫たちが、白人と黒人のあいだにある権力構造からはみ出し排除されつつ「モデル・マイノリティ」としてその維持に利用されている自らの位置を自覚し、それを覆すために連帯したところからはじまっている。
その発祥から、アジア系アメリカ人というあり方は本質的に黒人や先住民の運動に呼応し共闘するものであったはずだが、しかし近年Kenny Xu著「An Inconvenient Minority: The Harvard Admissions Case and the Attack on Asian American Excellence」やXi Van Fleet著「Mao’s America: A Survivor’s Warning」などに見られるように、アジア系アメリカ人の権利が黒人やラティーノによって脅かされている、と主張する白人至上主義に親和的なアジア系アメリカ人も増えている。かれらの多くはアジア系アメリカ人の歴史を知らないまま、自分たちの子どもにより良い機会を与えようと必死な移民一世たちだ。
本書は、アジア系アメリカ人たちにアメリカの白人至上主義的な人種システムにおける自らの位置や黒人やラティーノ・先住民との共闘の歴史を自覚させることを目指している。はじめアジア系アメリカ人の自分が必要とする本はなかったと書いているのを読んで「いやあるでしょ、ちゃんと探したの?」と思ってあんまり期待してなかったけれど、わたしがその時思った本からちゃんと引用されてるし、最初思ったより良い方向に期待を裏切ってくれた。あとから思うとわりとおすすめっぽい。ただアジア系アメリカ人が反黒人主義を内面化している、というのはその通りだと思うんだけど、そこで書かれていることがわたしの認識よりかなり酷くて、少し驚いてしまった。確かにわたしの周囲のアジア系アメリカ人たちはアジア系コミュニティでは浮いているラディカルな人だとは分かってたけど。