Elie Honig著「Untouchable: How Powerful People Get Away with It」

Untouchable

Elie Honig著「Untouchable: How Powerful People Get Away with It

マフィアやウォールストリートの犯罪者の追求で知られるニューヨーク南部地区連邦検事局に勤めていた元検察官が、権力者たちはどのようにして法的追求から逃れているのか説明する本、だとタイトルを見たときは思ったのだけれど、実際には大部分は「なんであれだけ犯罪行為に加担しているのが明らかなトランプが法的追求を(少なくとも現時点で)逃れているのか」という話だった本。

序盤はマフィアのボスや不祥事を起こした企業の幹部が部下に違法行為を行うよう導きながら直接の指示は言わずに匂わすだけに留めたり、逮捕された部下に組織と関係の深い弁護士を付けることで組織の秘密が漏れないようにしたり、あるいは証人や陪審員に報復があると恐れさせたりするなど、さまざまな方法で法的責任から逃れている様子が説明される。実際に検事としてマフィアや政治家などの犯罪を追求した著者の文章だけに、その部分はとてもおもしろい。

ただ後半になるとほぼ全てトランプのどういう行為が犯罪に問われるべきなのか、そしてどうして法的追求が難しいのか説明しつつ、メリック・ガーランド司法長官ら法的追求を行うべき責任者たちの無為無策を批判する内容になっていて、そうだよなあトランプあれだけめちゃくちゃやってもまだなんの犯罪でも起訴されてないんだよなあ、近い未来に起訴されると言われているけど有罪に持ち込むのは難しいよなあ、と納得するのだけれど、トランプの例は特殊すぎて「権力者たちはどのようにして法的追求から逃れているのか」というタイトルの答えにはなっていない感じ。別に悪い内容じゃないんだけど、思ってたのとちょっと違う。