Cordelia Fine著「Patriarchy Inc.: What We Get Wrong About Gender Equality and Why Men Still Win at Work」

Patriarchy Inc.

Cordelia Fine著「Patriarchy Inc.: What We Get Wrong About Gender Equality and Why Men Still Win at Work

名著「Delusions of Gender」や「Testosterone Rex」でニューロセクシズムという用語を提唱しつつ脳の性差論やテストステロン(いわゆる男性ホルモン)による影響の過剰な解釈を批判してきたフェミニストが、現代の欧米先進国の職場における男女格差について論じる本。アメリカでの出版はまだ先(8月)だけど気になるイギリスのフェミ本を先に読んじゃおう企画第二弾。ちなみに表紙画像はアメリカ版のほうがカッコよかったのでそっちにした。

本書が批判するのは、次のような主張だ。「欧米先進国では性別による差別は禁止され、教育や就職における差別はほとんど撤廃された。それでも男女のあいだで職種や収入に大きな隔たりがあるのは、男性と平等に扱われるようになった女性たちが自主的に自分たちのキャリアや生き方を選択した結果であり、差別のせいではない。」 たびたび進化心理学を根拠として掲げながら主張されているこうした議論に対して、著者は社会的ステータス論や比較文化論を通して細かく説得的に反論していく。ねちっこい。

ただ「Testosterone Rex」の時にも思ったけれども、46,XX CAH(先天性副腎過形成症)の女性(として育てられた人)とテストステロンの影響についての記述には少し疑問があって、著者には当事者の人が前にも話をしたはずなのにな、というのが残念な部分。まあほとんどの人はCAHについて何も知らないし疑問を持たないだろうけど。