Arundhati Roy著「Azadi: Freedom. Fascism. Fiction.」
モディ政権やヒンドゥーナショナリズムとの対決姿勢を深めているインドの作家で批評家のアルンダティ・ロイが2020年に出版した政治エッセイ集。
多数の言語や民族が存在しそれぞれが対立したり和解したりの複雑な歴史を経験し、イギリス植民地主義の枠組みを受け継いだ世俗的社会主義国家という建て前を掲げて建国されたインドが、実態はともかく長いあいだ掲げてきたそうした建て前すら投げ捨て、ヒンドゥーナショナリズムによるファシズムに陥ろうとしている。カシミールやアッサムといった地域の住民たちの迫害だけでなく全国でムスリムに対する暴力や権利剥奪が広まり、国内のリベラルはそれを正面から批判することすらできていない。植民地主義の歴史やその影響から文学の役割、コロナウイルス・パンデミックを口実とした人々の生活への圧迫、言論の自由の危機など、丁寧で鮮やかな批評が繰り広げられる。