V著「Reckoning」

Reckoning

V著「Reckoning

パフォーマンスとフェミニズムを結びつけた『ヴァギナ・モノローグ』以来世界中で活躍している元イヴ・エンスラーが名前をVと改めて出した著作集。40年に渡る彼女の執筆活動からモノローグ、詩、エッセイ、雑誌記事、日記、声明文などさまざまなジャンルの文章を集め、彼女の改名を説明する神話的なストーリーで締める。

『ヴァギナ・モノローグ』で得た名声と影響力をもとに、著者は世界各地を飛び回り、難民キャンプで、ホームレスシェルターで、刑務所で、性暴力被害者のための病棟で、女性たちと向き合い、著者自身が経験した虐待の過去と重ね合わせながら、彼女たちの声を拡散しようとする。そこにはもちろん、彼女が観光客的に各地の悲劇を見て回り収集し自分のネタにしている、という批判もあり、彼女自身もそうした自問をしつつ、その足は止めない。女性たちの悲惨な経験を聞くだけでなく、彼女たちと踊り、音楽を鳴らし、喜びをも共有しようとする。より最近の文章では民主主義の危機や気候変動による人々の生活の破壊などについても語る。

わたしは2000年前後に『ヴァギナ・モノローグ』内におけるインターセックス(性分化疾患)の女性の扱いをめぐって彼女とやり取りをしたことがあり、またその作品のなかで欧米人女性とアジアやアフリカの女性たちの描写の仕方の違いなどから、彼女にあまり良い印象は持っていなかったのだけれど、この本を読んで、思っていたよりもちゃんとアーティストだな、というのと、あと不満は残るけれども批判に向き合おうとはしているんだな、とは思った。改名を説明するエピローグはオードリー・ロードの「Zami: A New Spelling of My Name」を思い起こさせるバイオミソグラフィー(ロードの造語)だった。