Chuck Collins著「Burned by Billionaires: How Concentrated Wealth and Power Are Ruining Our Lives and Planet」

Burned by Billionaires

Chuck Collins著「Burned by Billionaires: How Concentrated Wealth and Power Are Ruining Our Lives and Planet

ビリオネア(総資産10億ドル以上の人たち)ら大富豪たちがその財力によってどれだけ社会と環境を壊しているか論じる本。

一生かけても使い切れない、どころでないほどの資産を持つビリオネアたちが社会にとって害悪であるという話はいまさらだし、あんまり期待はしないで読み始めたのだけれど、思っていたより良い。社会主義が嫌いな人、才能がある人が努力して大金持ちになるのは当然だと思う人にこそ勧められる内容。

経済格差の拡大に抗議して2011年に起きたウォール街占拠運動では「自分たちは99%だ」というスローガンが掲げられたが、この「99%」という数字はアメリカの資産がトップ1%の大富豪たちにますます集中している現状を批判し、世の中の大多数を占める99%の大衆が連帯して立ち上がることを訴えるものだった。しかし実際には99%の中にも大きな経済的格差はあり、トップ1割くらいは1%のために金融や法律のサービスを提供する仕事で高収入を得ており、また子どもの世代で没落することを恐れていたりして、連帯するのは難しい。また1%の中にもビリオネアたちもいれば子孫の代まで将来安泰とはいえない人もいて、かれらの利害も共通ではない。激しすぎる貧富の差は許されないというとき、どこまでが是正の対象になるのか、必ずしも人々の意見は一致していない。

そういうなか本書が主な批判の対象とするのは、高報酬で特別な税理士や弁護士を雇って自分たちだけ社会のルールに縛られない特権的な立場にいたり、政治に影響力を及ぼしてそうしたルールそのものを自分たちに有利に捻じ曲げてしまえるほどの資産を持つ大富豪たちだ。そうした大富豪たちはただ単にほかの人にはできない贅沢な暮らしを送るだけでなく、社会のあり方を歪めてほかの人たちの生活を圧迫し、生存を脅かすことになる。才能と努力(と運)によりビジネスを成功に導いた起業家がそれなりに豊かになることは許容できても、その結果いくら稼いだからといって将来新たな才能が台頭する機会を奪うような行動は認められるべきではない。

本書は金持ちとはどういう人なのか、ビリオネアはどのようにして生まれているのか触れたあと、章ごとにビリオネアたちが環境の破壊や一般の人々の健康や住宅の劣化、社会の分断や人種格差の拡大、税制の不公平さや民主主義への危機をどうもたらしているのか説明し、ビリオネアたちの権力を守るイデオロギーを批判、かれらの財力と権力を減らすための提言を行う。わたし個人はビリオネアの権力やその解体の必要性については読む前から分かっていたけど、最初のあたりに出てきた「金持ち」にどのような階層があるのかといった部分がおもしろかったけど、ビリオネアが単にいろいろ贅沢したり良い思いができるだけの存在ではなく社会を破壊しているという点については、ビリオネアに成功者として憧れを抱く人たちにも説得力があるのではないかと思った。