
Jimmy Wales著「The Seven Rules of Trust: A Blueprint for Building Things That Last」
ウィキペディアの創始者ジミー・ウェイルズが、「そんなの絶対にうまくいくはずがない」と言われていたウィキペディアが人々の信頼を勝ち取り成功するまでになった経緯を振り返りつつ、顧客やその他の人たちの信頼を得るためのアドバイスを行うビジネス本?みたいなのに片足突っ込んでいる不思議な本。
ウィキペディアについての部分は、知っていた話も多いけれどやっぱりおもしろい。でもそこを離れて信頼を生み出した実例として著者がほかに挙げるのがuberだったりAirBnBだったりしてガッカリする。他人の運転する車に乗ったり他人の家に泊まる、あるいは他人を車に乗せて運転したり他人を家に泊まらせる、というuberやAirBnBのサービスの仕組みは確かに当初「そんなこと人々が受け入れるはずがない」と思われたし、実際にさまざまな問題が起きたけれども、試行錯誤の末「信頼」を生み出すことに成功して定着し、利益が上げられるようになった、と著者は説明しているのだけれど、労働搾取や賃貸住宅の家賃高騰など社会的な悪影響には無頓着。
それだけでなく、これらの企業が独占的プラットフォームとして買い手と売り手の双方を掌握している立場を利用してクソメタ化を進めていることにも触れない。ビジネスには信頼が必要だというけれどuberやAirBnBが少なくとも売り手側に信頼されているようには思えないし、買い手側でも女性やクィア、障害者たちを中心に不信感が広がっているように思う。こんなのを類似の例にあげてしまうのは、かえってウィキペディアの奇跡のような成功を貶めてしまうことになるように思うのだけど。