Thomas Piketty & Michael J. Sandel著「Equality: What It Means and Why It Matters」
平等をテーマとしたトマ・ピケティとマイケル・サンデルの対談本。ていうかピケティが所属するパリ経済学院で行った対談を文字起こししたうえで手直ししたもので、短くてサクッと読めるけど内容も薄い。
序盤はサンデルが「経済的な不平等があったとしても資産による政治に対する影響の格差がなく平等な民主主義が実現していたらどうか」「教育や健康、住居など文化的な生活に必要なものが市場以外のところで保証されていて、経済的な不平等は人生に必要がない贅沢品の消費だけに影響っするものだったら不平等は悪いのか」という問いを繰り出し、不平等が悪いのは何が理由なのかはっきりさせようとするけど、ピケティが「思考実験としてそれらを切り離して考えることはできるけど実際にはそれらは繋がっていて切り離せないし、仮にいつか経済的な不平等が民主主義や人々の尊厳を脅かさない社会が実現するとしてもそうなるまで当分のあいだは脅かすわけで、切り離す意味ないよね」と応えているのがおもしろい。そりゃそうだよ。
中盤からはポピュリズムという言葉の定義やそれを使うかどうかといった話から、グローバリゼーションや移民政策の話に繋がり、最後には左派はどうすれば労働者階級の支持を回復することができるかと議論しているんだけど、左派エリート叩きをしている本人たちがエリート中のエリートで、しかも上記のように現実と関係のない理念的な話で盛り上がっていたりするので、誰が何言ってんだと。あとピケティにロールズ批判について質問されてサンデルがどう簡単に応えようか困っている感じがした。
別の本でサンデルが行っているメリトクラシー信仰批判の話題も出てきて、そこはおもしろいんだけど、大学入試や政治にもくじ引きを導入すべきだとして、政治では二院制のうちの片方の議員をくじ引きで選んだらどうか、というのは、Alexander Guerrero著「Lottocracy: Democracy Without Elections」が「選挙とくじ引き、両方の選挙の悪い部分が積み重なってしまう」として否定していた考え方で、真面目にくじ引き代議制について研究している政治学者の意見に耳を傾けているようには見えず、こいつらにとってはくじ引き代議制なんて思考実験にすぎないのかなあと。そーゆーとこやぞ?