Suzette Mullen著「The Only Way Through Is Out: A Memoir」
名門大学を卒業後、企業弁護士として活躍するとともに、愛する夫と結婚し二人の息子を大人になるまで育て上げた著者が、50代に入り自分の人生を振り返って自叙伝を書こうとしたことをきっかけに、同性の親友に長年恋心を抱いていたことを自覚して、全てを失う危険をおかして自分自身と向き合った本。
姉には気づかれていたみたいだし、いや話を聞く限り結構若いうちからヒントは出てたよね、と思うけど、それはあとから思い出して意味が生まれてくるだけで、本人としては親友に愛情だけでなく欲情まで向けていることを自覚して悶絶し、夫との結婚生活に疑問を感じていく著者。はじめ愛情は受け入れられないけれど友情はそのままにしてくれる姿勢だった親友からは絶縁され、夫からは別れるなら別れる・同性への欲望を切り捨てるなら切り捨てるではっきりしろと要求され、同様に高齢で女性が好きなことに気づいた女性たちのフェイスブックグループに入会して支えてもらう。しかし著者の母親に指摘されるように、これが20代や30代ならレズビアンとしてカミングアウトして人生を仕切り直すことも比較的難しくないけれど、50代の著者が長年連れ添った夫と別れて同性のパートナーを探すのはハードルが高い。
自分勝手なところも失敗したところも正面から認めつつ、優しくて素敵な「遅咲き」レズビアンたちとの運命的な出会いを経て、人生はじめてプライド・フェスティバルに参加する著者がかわいすぎ。二人の息子も素敵だし。レズビアンコミュニティの中でもあんまりわたしが知り合わないタイプの人の話なので興味深かった。あと、夫と一時的に「第三者と付き合うのはアウトだけど一時的に試しに別居してみた」とき、時差があったためか仕事中の夫がうるさい職場のクロゼットにこもって著者と電話で話をしていて、「てゆーかクロゼットに入るの逆じゃね?」ってなるの、地味に思い出し笑いしてしまう。