Steve Benen著「Ministry of Truth: Democracy, Reality, and the Republicans’ War on the Recent Past」
政治家や政府が歴史を自分に都合がいいように改竄したり誤魔化そうとするのは昔からあるけれど、最近の共和党はごく最近起きたばかりの出来事についてウソつきすぎじゃね?という本。著者はケーブルテレビ局MSNBCのリベラル系政治トークショーのプロデューサ。
起きたばかりの出来事についてのウソといえばまず思い出すのが、トランプが2017年に大統領に就任した際の就任式典に参列した人々の数が史上最多だったとその翌日に主張した件。過去の就任式典の日の同じ時刻に取られた航空写真や交通機関のデータなどを見れば明らかに事実に反したこの発言はホワイトハウス報道官らによって繰り返し主張され、政権は事実を報道したメディアを攻撃、しまいには「オルタネイティヴな事実」という迷言まで飛び出す事態に。このようにトランプ以降の共和党は、少し前のことを人々が忘れた頃に歪曲するだけではなく、人々の眼の前で起きたばかりのことを正面から否定し、事実を捻じ曲げていく。
こうした姿勢は、事実を巡って議論することをもはや放棄し、どちらの主張を事実と受け入れるか支持者に突きつける行為。それがトランプ一人だけなら成功しなかっただろうけれど、明らかに事実に反するウソがFOX Newsなどの右派メディアによって大々的に宣伝され、それを最初はトランプを疎ましく思っていたはずの共和党の政治家たちが繰り返すうちに、多くの人たちのあいだでそれが事実だと信じられてしまう。その結果として、コロナウイルス・パンデミックでの死者は本来より膨らんでしまい、また連邦議事堂の武装占拠が実現してしまった。
まあだいたい知ってることばかりだし、リベラル系政治トークショーのあの感じがわたしは苦手なので読んでいて楽しくもないけど、まあそうだよね、といった感想。トランプがボロ負けして共和党の政治家や支持者たちの目が冷めてくれたらいいな、以外に改善される希望が見当たらない。