Saseli Bowen著「Bad Fat Black Girl: Notes from a Trap Feminist」
トラップ・フェミニストを名乗るバッデスト・ビッチによる、全てのバッド・ビッチのための本。ヒップホップのジャンルの一つとされるトラップだけれど、この本では著者が愛するその音楽とともに、それを生み出した南部や都市部の貧しい黒人たちのリアルなハスル（麻薬販売や売春を含め、生きるために危険をおかして必死になること）をベースにした、あたらしいフェミニズムが展開される。トラップの男性アーティストのリリックにありがちな女性蔑視や性的対象化に抵抗しつつ、自らの身体やセクシュアリティを自分の手のもとに取り返し武器にする多くの女性アーティストやフェム系男性アーティストの言葉や生き方に繋がる。太った黒人女性として、バイセクシュアルとして、セックスワーカーとしての立場から、ボディ・ポジティヴィティやセクシュアリティ、人間関係、貧困、犯罪（万引き犯として捕まった経験も書かれている）などさまざまなトピックに触れており、その強烈なメッセージに勇気づけられる。20年前に出版されいまでも古典として読まれ続けるヒップホップフェミニズムの本「When Chickenheads Come Home to Roost: A Hip-Hop Feminist Breaks It Down」を受け継ぎアップデートする貴重な本。
