Sarah Berman著「Don’t Call It a Cult: The Shocking Story of Keith Raniere and the Women of NXIVM」
2018年に性的人身取引などで摘発され、セックスカルトなどと騒がれた自己啓発セミナー企業NXIVMについての本。NXIVM事件については他にもいくつか本が出ているけど、さっと見てこれが一番センセーショナルになっていないかなあという直感で選んだ。直感だから違うかもしれないけど。
カルトといえばカルトなんだろうけど、それよりはごくありふれた、ちょっとカリスマのあるミソジニーDVセクハラ男の話の延長といった感じ。ほら某写真家とか某著述家とか。イデオロギー的にはアイン・ランドとかポジティヴ思考とかを援用して精神的な支配を強めてもいるんだけど、結局過去に告白させた犯罪を暴露するぞとかリベンジポルノばらまくぞという脅しに頼ってるあたりも、カルト的というよりはふつーにパワハラ的。
その一方で、DV一般についてもそうなんだけど、殴る・蹴るみたいな目に見える暴力でなくて、精神的な支配を使った関係性の暴力は司法制度で取り扱うのが難しくて、未成年との性行為など明確に犯罪を構成する行為について首謀者は懲役120年の判決を受けたけど、裁かれていない加害行為も多い感じ。NXIVMの被害者たちがつながりを持ち始めたのと同じ時期にハーヴェイ・ワインスタインへの告発やmetooの盛り上がりが起きたおかげで被害者が声をあげやすくなったのはよかった。